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005 シナリオの相互作用とは?

児西清義 2005.10.31

セミナーやコンサルの場で話をしているとき“シナリオが相互作用を起こす”とか“相互作用を起こすポイントを探す”などの表現をして、「その意味はなにか?」という質問を受けることが多い。あるいは、このホームページでも、“三国志、赤壁の戦いでは「12月という冬の時期に東南の風が吹く日がある」という知識がキーになる。同じ地図を見ても地図を見る人の知識と地図に表現されている知識が相互作用を起こし、作戦が違ってくるのである。”という表現をした。コンサルティングの場では、知識地図を作成し、シナリオを開発する。その次に来るのが、お客様の戦略シナリオを作成するプロセスである。この時には、顧客にとっての環境シナリオと顧客の施策・戦略の間の相互作用を評価するプロセスになる。このようにシナリオの相互作用を考え評価することはもっとも重要な作業である。以下、実例をもとにシナリオの相互作用とは何かを説明する。

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図1

図1はエッセイのNo.001“どのように知識地図を始めたのか”でも紹介した1980年から1990年までのシナリオ俯瞰図である。図1は上から順番にテレコム技術、半導体などデバイス技術、汎用コンピュータアーキテクチャとデータベース技術、記号処理技術(知識情報処理)、音声認識、自然言語処理技術に関するシナリオすべてを俯瞰できる形式にまとめている。これら各領域のシナリオをそれぞれ1本のパイプの形で表現する。そして時間軸は左から右に進む。これがナレッジプロデュース(児西)流の表現の仕方である。この俯瞰図でいくつかのパイプにまたがって曲線が描かれている。シナリオ間の相互作用を発見するとは、各シナリオを子細に分析して他の領域に影響を及ぼす力を見つけることである。第5世代コンピュータ開発計画を検討する委員会の体制の中にデバイス技術予測ワーキングを設置し、1990年までに至るデバイスの性能予測を行った。この図1の実例では一番大きなインパクトのあった相互作用のポイントはデバイス技術の予測における1980年代中央での技術的な到達点である。1985年頃に実現できるワンチッププロセッサの処理性能は1970年代末の汎用小型コンピュータ並になるということが分かった。この事実がわかり委員会の体制の中で検討している研究者達に大きな波紋が拡がった。

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図2

汎用コンピュータ小型機と同等の処理性能がワンチップになれば、それまで情報処理の対象にならなかった市場にまで低コストの情報処理が浸透していくことが予想される。そうなると何が起きるのか、この議論が活性化して図2に示すようにシナリオが改訂された。最初は汎用コンピュータ+データベース技術のシナリオは一見してなだらかな展開をみせていたのであるが、改訂された図2では汎用コンピュータのパイプと同じくらいに太いパイプが80年代の後半に追加されている。現在から振り返ってみれば当たり前になったが“オフィスオートメーション”と“マルチメディア情報処理”の世界が80年代の半ばから大きなセグメントとして展開するシナリオが開発されたのである。この新しいセグメントでは従来専門家が使う道具であったコンピュータをナイーブなユーザが使うことになり、そのためのヒューマンインタフェース技術やマルチメディア情報の処理や蓄積のためのモデルが必要になる。この検討過程の例のように他の領域に大きなインパクトを与える事実も専門分化された現在の学問・研究の世界ではなかなかストレートに伝わらないことが多い。このような事実を俯瞰できる形に表現し、そこから一歩踏み込んで相互作用を分析することが大切である。ナレッジプロデュースがコンサルで行うシナリオプラニングでは、この例のような他分野に影響を与える力の分析を中心に行うことが多い。この作業の重要性は技術の分野に限ってのことではない。社会シナリオと技術シナリオの相互作用を分析して新しく展開する市場を予測することも重要だ。

あまり古い事例ばかりを引用しているとこのエッセイコーナーが昔話コーナーのように誤解されてしまうので最近の事例をひとつ紹介する(図3)。このシナリオ俯瞰図は非常に広い範囲を扱っている。そのスコープは工業デザイン(空間設計、空間表現、環境設計)、感性工学、生物学、心理学、認知心理学、感性情報処理、ヒューマンインタフェース、知識情報処理、自然言語処理、システムアーキテクチャをカバーしている。なにしろテーマが“感性と技術を融合する”なのである。そして時間軸としては、1980年代、1990年代、それから次の10年間(つまり現在進行中の10年)の研究開発の思想の流れを俯瞰するものである。

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図3

本稿ではこの俯瞰図の情報科学に関する部分のみをズームアップして詳細まで紹介することにする。この図4には複数のパイプにまたがる相互作用の曲線がメッシュのように引かれていることにお気づきと思う。この俯瞰図を見て読者は何を感じられますか? 筆者にはぞくぞくするような相互作用の嵐の時代が予感され、この時代を分析し、ビジネスチャンスにつながる本質的な変化の波動( Waves of Changes )を明らかにしていく。これはシナリオプランニングを行う者にとっては格好の、スリルに満ちた10年間が予感される時なのです。

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図4

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   (2005.10.31)




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Last-modified: Sun, 18 Jul 2010 21:39:06 JST (3013d)
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