エッセイ集/ダウンロードから情報の分類・分析へ(その1)

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011 ダウンロードから情報の分類・分析へ

児西清義 2007.2.20

情報を分類する

さて、先のエッセイ「ダウンロード現象(No.009)」では情報を分類整理するところまで話を進めた。そこでも書いたが、分類整理の仕方は、解こうとしている問題や視点に応じて適宜変えていくのがよい。この分類体系をダイナミックに変更するなどの処理を行うようになると、単に情報を集めたといえる段階から情報を分析する段階に進んでいることを述べた。それでは、実際にどのように分類しているか、具体例を示す。次の図1は2000年前後に筆者が作成した記事データベースのフォルダー構成(ディレクトリ)の一部である。この記事データベースを作成した目的は、ネットの世界で起きていることを分析する。特にそのビジネスの仕組みに焦点を当ててどのように変化していくのかを明らかにすることである。2000年前後というと、まだバブルがはじける前の時期であり、ネット社会に向けての急激な変化が目の前で起きていたときのことである。

分類ツリー(フォルダー構成例)@ネットビジネスの仕組み.jpg

図1

フォルダー構成は問題をとらえる枠組み

さて、このフォルダー構成から筆者の対象のとらえ方がわかる。この時点ではネットビジネスはASPのような情報処理系のサービスとブロードバンドコンテンツは別の変化をすると考えていたことがわかる。そのために「コンテンツとブロードバンド」は別のフォルダーに分けている。当時のネットの状況はISDNの時代であり、スピードも64kbit/sしか実現されてはいない。それでも常時接続がビジネスモデルにインパクトを与えることが話題になっていた時代である。この図で黒く反転しているフォルダー「ASPとアプリケーションビジネス」の中に集められた記事とその他いくつかのフォルダーの記事をベースにして、本ホームページ内ですでに何度か紹介した知識地図(図2)を作成した。

rei2.gif

図2


図2 ↑クリックして拡大

「ASPとアプリケーションビジネス」はこの地図のベースになったフォルダーである。この知識地図を作成した段階では、約200件の記事があった。ちなみに、この「S2;ネットビジネスの仕組み」の中には約3000件の記事があり、それが27個のフォルダーに分類されている。さてこの実例をもとに、情報の分類・分析から始まって、断片的な情報の関連づけ、2次元の知識地図の作成、知識地図上での情勢判断、そして知識地図からどのようにシナリオを紡ぎ出すのかを順をおって説明することにする。一度に解説するのは無理なのでこのエッセイのシリーズの中で連載していくことになる。また、どのようにシナリオを紡ぎ出すのかもテーマの一つなので、このエッセイの連載に物語論がときどき顔をだすことになる。

まずは全体を把握する

分析するといっても化学物質ではないのでリトマス試験紙のようなツールがあるわけではない。分析するには、まず情報を眺めてみることである。定性的な情報では、その意味を把握することが分析のための第一歩である。もっとも意味を把握することは第一歩ではなく、ゴールであることもある。ところが文章や文書の意味を人間に近いレベルで理解するところまでは知識情報処理技術は進歩していない。特に多くの情報が全体としてどのような意味を持っているのかまでを判断することにかけては人間にかなわない。この理由は、日本語のような自然言語で記述されている文章には意味的な曖昧さが入ってくる。単語にも意味の広がりがある。また文脈によって意味が異なってくることもある。この多義性をどう処理するかが難しいのである。記事データベースのように文書が対象になると、一つの文書に複数のテーマにかかわることが書いてあることも多い。そうするとどの部分を取り出して処理するのか等は機械には決められなくなる。このためにコンピュータで処理することが難しくなる。

そこで《眺める》ということになる。パソコンを使うことを前提にして説明すると、フォルダーを開いて、集められた情報のセットを眺めるのである。この時の基本的な態度、姿勢に関して重要なポイントは《俯瞰する》ことである。集められた個々の情報を微に入り細にわたって調べるのではなく、まず全体を把握するという姿勢が大切になる。全体を把握するには、遠くから眺め、全体の構造を考え、徐々に体系づけていくことである。図1は“集める”、“俯瞰する”、“分類する”をなんどか繰り返した結果としてのフォルダー構成であり、これを作成した2000年頃の筆者のネットビジネスを理解するための枠組みでもあったわけである。

《眺める》というなんだか原始的な方法を提示しているように見えるかもしれない。しかし、米国の俳優ロバート・レッドフォードがCIAのエージェントに扮する映画が少なくも2本ある。・・・・という風にエッセイNo.003 「公開情報だけで知識地図をつくる」に書いたが、定点観測は情報の分析の基礎的な作業である。このあたりの重要性は、最近ベストセラーになっている手嶋龍一、佐藤優両氏の対談「インテリジェンス 武器なき戦争(幻冬舎新書)」でも指摘されている。要は人間の判断力と適切なツールの組合せが大切である。自然言語処理や意味処理を伴うツールについても別途話題にするつもりである。最近あるワークショップの場で知り合った東大・大澤幸生先生編著の情報処理学会のITテキスト「知識マネジメント(オーム社)」にまとめてある。おなじく大澤先生の「ビジネスチャンス発見の技術(岩波アクティブ新書)」もあり、この内容は筆者のような新規事業開発をレパートリーにするコンサルテーションと重なるところがある。

長くなったのでこの続きは別の機会に



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Last-modified: Wed, 31 Oct 2007 11:21:12 JST (3831d)
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