エッセイ集/技術予測の手法、シナリオ・プランニング(その1)

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007 技術予測の手法、シナリオ・プランニング(その1)

児西清義 2005.11.26

企業が事業戦略を策定するときにシナリオ・プランニングあるいはシナリオ法が有効である。なぜ有効かというと、一言でいえば“先の見えない時代”だからシナリオが必要ということになる。後ろで紹介する「シナリオ・プランニング、1998年ダイヤモンド」の日本版への序文にあるキャッチコピーが直感的でわかりやすいので以下に引用する;

■不確実な時代に対応できる「能力」を身につける

■「シナリオ・プランニング」は、成功のためのフレームワークを提供するものではなく、不確実な時代に対応できる「能力」を企業組織が身につけることにより、成功を勝ち取る方法を提供するものである。

■「考える手順」を学ぶ

■より多くの変化を感じ取る

■変化に耐えうる戦略をたてる

                                 (引用終わり)

そもそもシナリオ・プランニング(シナリオ法)とは何か?その歴史は、第2時世界大戦末期に戦術、あるいは戦略決定のためにORの手法が大いに利用されたことにさかぼのる。その中で、数学的モデルで展開された解をそのまま戦略決定に適用するのではなく、さらにその解を使ったときの情景を描くことが行われた。そうするとモデル化の段階で見落された人間対物、あるいは人間対環境という数量化できない要素の必要性が発見された。ORは数量化できる要素のみをその対象とした点に限界があり、これを補うものとしてシナリオ法が登場する。

シナリオ法は、このような環境など数量化できない要素も考慮し、さらに対象となる期間を限定し、現在からどんな状態を経て、未来がどのように発展するか散文的に描写することである。このように情景を描き出すという点で、ここで言うシナリオは映画、演劇、テレビドラマの台本と同じ性格をもっている。しかし、シナリオは台本と異なり、自由な発想で思うがまま描くのではなく、論理的に矛盾のないものでなければならない。

そこで、シナリオを書く上で次のような基本的条件が考えられる。

(1)対象範囲、時期などを明確にする。

(2)本質的な影響を及ばす要素を明確にする。

(3)これらの要素に過去,現在,未来にわたって連続性をもたせる。

(4)変化の方向を選択する分岐点を明確にする。

(5)事象間の関係は,合理的,論理的でなければならない。

(6)分岐点において代替シナリオを考慮する。

このようにシナリオ法においては、変化の分岐点での楽観的、標準的,悲観的な選択方法により,それぞれ,ばら色のシナリオ,標準シナリオ,灰色のシナリオを作ることにより,それぞれの可能性に対して対策が考えられる。

これらを含めシナリオ法全般の長所として次の点が考えられる。

(1)種々の可能性を考えることにより,固定した思考パターンを解きほぐす

(2)意外な事態を警告する。

(3)社会環境を明確にすることにより,社会における技術の位置づけを明確にできる

(4)コミュニケーションを刺激し豊かにする。

筆者は1970年代の中頃、未来工学研究所に出入りしていたときにシナリオ法を勉強した。このころの教科書は、「技術予測入門、牧野昇著 1970年」や「ソフトテクノロジー、只野文哉著 1972年」などである。この「ソフトテクノロジー」のサブタイトルは「企業戦略のための技術予測と実例」となっており、最近のソフト工学のことではない。技術予測という言葉が使われているが、単なる予測と言うよりは研究開発プロジェクトの管理にも紙数が割かれている。これは最近のはやり言葉で言えばMOT(Management of Technology )である。このため、実例には米国NASAの宇宙探索、アポロ計画がよく引用されている。技術予測あるいはシナリオ・プランニングに関して、これらNASAの手法を通して勉強したNASA世代とロイヤルダッチシェルの事例を通して学んだ世代に分かれるようだ。ロイヤルダッチシェル世代のバイブルは、ピーター・シュワルツの「シナリオ・プランニングの技法、2000年東洋経済新報社」やキース・ヴァン・デル・ハイデンの「シナリオ・プランニング、1998年ダイヤモンド」などである。

これらの書物では、旧来のシナリオ法が一本道のシナリオを描いたのに対して複数の分岐を明確に意識するのが違いであるなどの記述もある。しかし、古い世代が学んだシナリオ法でも「ばら色のシナリオ,標準シナリオ,灰色のシナリオ」のように多少古めかしい表現であるが複数の分岐を明確に意識している。この面では違いはない。キース・ヴァン・デル・ハイデンの「シナリオ・プランニング」にロイヤルダッチシェルでの30年の経験から、シナリオ・プランニングが組織にもたらす「5つの効果」をあげている。企業経営にシナリオ・プランニングを導入する意義として「5つの効果」十分に説得力があるので再び同書から引用する。

その5つとは、、

(1)意思決定の質が向上する

(2)「考える力」が組織全体に拡がる

(3)組織が環境の変化にいち早く対応できるようになる

(4)マネジメント力が強化される

(5)リーダーシップを発揮するためのツールとして活用できる。

                        (以上同書の2頁から引用)

ナレッジプロデュースでは、お客様の戦略企画策定をお手伝いするコンサルティングをお主なメニューとしている。しかもシナリオをビジュアルに描くという特徴もある。今回のエッセイでは、シナリオ・プランニングとは何かを述べるにとどめて、後続するエッセイで、ナレッジプロデュースではシナリオをどのように考えているのかを紹介することにする。

(2005.11.26)



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Last-modified: Tue, 30 Oct 2007 11:24:32 JST (3832d)
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