エッセイ集/地図とは?宝島と三国志

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006 地図とは?宝島と三国志

児西清義 2005.11.07

地図とはそもそも何なのか?ナレッジプロデュースが知識地図と称しているものは、形式的には多くのテキストあるいはパラグラフが2次元の平面上にその関係性にしたがってリンクでつながっているグラフのように見えるものである。そしてその地図を作成しながら、あるいは出来上がった知識地図の上でブレーンストーミングなどを行う。つまり何らかの目的をもって知的な作業を行うためのプラットフォームである。そこで行う知的な作業の性質や検討するテーマの性質にしたがっていくつかの地図の構造に関するテンプレートを用意している。

このような知識地図を具体的に説明して行く前にもう少し一般論で地図とは何かについて考えて見たい。すこし古い話であるが、米国の探偵作家クラブ( Mystery Writer’s Association )では、「ミステリー作家のためのハンドブック」を編纂している。このハンドブックは翻訳されて講談社文庫から出版されている。この翻訳本の方の書名は「ミステリーの書き方」。アメリカ探偵作家クラブ著、ローレンス・トリート編、大出健訳で、現在でも書店で入手可能である。この第3章に面白い記述がある。第3章では、米国の探偵小説作家あるいは推理小説作家を対象にして、どのようにして探偵小説や推理小説の筋書きを思いつくのかについてアンケート調査をしている。そのアンケートの結果を紹介する前にこのハンドブックの編纂者は気の利いたイントロダクションを書いている。そのイントロ部分を以下に引用する。このハンドブック第3章のタイトルは、ずばり「アイディアの見つけ方」である。


作家はよく、どこでアイディアを見つけるのかと聞かれる。私達のアンケートも、これが第二の質問だった。質問の形はこうだ。「貴方の場合、ストーリーの種になるのはどんな種類のアイディアですか?あなたはどんなことからストーリーを思いつきますか? 変わった人を見かけたとき、新聞記事、いいトリックなど、きっかけになることを具体的に書いてください」

(中略)

ロバート・ルイス・スチーブンスンが今生きていたらMWAのメンバだったに違いない。彼が「宝島」を書き始めたきっかけは、かなり風変わりである。「宝島」のまえがきによると、ある日の午後、退屈しのぎに地図をいたずら書きしたことからすべてが始まったのだそうだ。あらためて地図を眺めているうちに主人公たちが目に浮かんできて「宝島」を書き始めたのだという。スチーィブンスンはこう書いている。「地図が物語の主役になること少ないかもしれないが、地図というものは大事なものだ。物語の舞台が実在であれ架空であれ、作者はその土地を自分の掌のように知り尽くしていなければならないのである。

(中略)

わたしが思うには、自分の選んだ地図を忠実に守り、そこからインスピレーションを引き出すようにすれば、つまらないミスを防ぐという消極的効果だけでなく、確実に得るところがある。地図を眺めていると、思いがけない様々な関係が浮かび上がってくる。なぜ気づかなかったかと思うようなところに、登場人物たちにとっての通り道や近道が見えてくる。「宝島」ほど地図が前面に出ていなくても、これこそアイディアの宝庫だということが分かるに違いない

(以上、「ミステリーの書き方、第3章」から引用。強調は児西。)


このスチーブンソンの宝島の例により、地図には人間の精神活動に対して以下の作用があることがわかる。

(1) つまらないミスを防ぐ役割を果たす

(2) 思いがけない様々な関係性を浮かび上がらせる

(3) 結果として、地図はアイディアの宝庫となる。

北方謙三の三国志、いわゆる「北方三国志」にも地図を何度も何度も眺める英雄達の姿が描かれている。特に魏の曹操や蜀の諸葛孔明らは、戦略を構想するとき、また軍事行動を起こす時の戦術を練る時には何度も何度も地図に見入る。北方三国志では、「・・・頭の中に全て入っている。それにもかかわらず何度も何度も地図を見てしまう・・・・」このような表現があの全13巻のなかに何度もでてくる。

これらのエピソードから、地図とは、

(4) 戦略、戦術、作戦を考える人は地図を何度も何度も繰り返し見るものである

(5) そこでは(1)にあるように見落としを防ぐために何度も繰り返し見るという側面

(6) 何度も見ているうちに最初は分からなかった意味が見えてくるという側面

(7) この2つの側面に加えて、その地形の上で起こっている事象(文脈)に関する情報がリアルタイムに地図を見る人に入ってきている場合には、新しい情報(知識)により地図の意味が刻々と変化するものらしい。

ナレッジプロデュースでは、知識地図を企画、特に戦略企画のツールとして使う。このような立場からは、ここに紹介した(1)から(7)のような地図の性質は非常に興味深いものである。単に興味深いものであるというよりは、地形をイメージさせる構造を意識しながら、多くのテキストを配置し関連づけるリンクをはり、関係性が分からない部分は空白( blank or missing link )として残すなどして(1)から(7)のような働きをもたせることを意識して知識地図を作成する。



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Last-modified: Tue, 30 Oct 2007 11:24:33 JST (4036d)
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