連載物語/プロジェクトの命名 と広報活動開始(2.6)

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わが旅、次世代コンピュータ

第1編 第五世代への旅

第2章 船乗りを集め、地図をつくる

プロジェクトの命名と広報活動開始 (2.6)

1978年の秋になって、つまり児西が有識者に対する一連のヒアリングをしている最中のことだ。中野総括班長と児西の雑談の中でプロジェクトの正式名称を決めることになる。「ところで児西君、今のコンピュータは何世代だったのかな」「その世代の定義が曖昧なのです。以前はハードウェアがどのような素子で作られているのかによって世代を分けていたのではっきりしていたのですが。つまり真空管が第一世代、トランジスタが第二世代、集積回路で構成されるコンピュータが第三世代です。ところが、最近になって業界でも3.5世代などといっているのです」「どうもよく分からないが」

「昔は素子の進歩とコンピュータの機能・性能の進歩が画然としていたのですが、最近は世代というよりは連続的な変化になって、雑誌によっては3.5世代の次は3.75世代という風にますます一般の人には訳がわからなくなってきています。第四世代に近づきながらも永遠に漸近しているようなものです」「いつまでもプロジェクトの名前が次々世代でもあるまい」そうか、中野総括班長の時代にはっきりと名前をつけてプロジェクトの広報戦略を考え、実行に移さなくてはと児西は思う。年を越すと中野は異動する可能性が高いのだ。 「ともかく、大雑把に言って次は第四世代のはずなので次の次は第五世代として売り出しましょう」「うん。正式名称を第五世代コンピュータプロジェクトにしよう」「その名前でプレスに流すことにします」……、

早速、中野総括班長は何人かの記者に連絡をとってくれる。記者への対応は担当官の仕事なので、児西が電子政策課のソファーで説明することになる。新しい政策に関する記事は派手に宣伝するのが通産省流のやりかたであるので、説明するほうも楽しい。児西が対応した79年度から勝山治夫の一年目(1980年度)までの新聞記事の見出しをピックアップしてみると次のように派手である。

「第五世代開発を本格化、連想や判断も可能に、コンピュータ頭脳機能に一歩(朝日)」

「第五世代の電算機開発、80年代の情報産業見直し、通産省諮問(朝日)」

「通産省、第五世代コンピュータ開発へ、非ノイマン型が特徴、来年度新政策の目玉、90年代への足がため図る(情報産業新聞)」

「第五世代は知識情報処理、電算機研究委が中間報告、人間のよき協力者、知的な回答・助言も可能に(日経)」

「通産、海外からも動員、幅広い研究体制に、第五世代電算機の開発、頭脳結集へ新機構検討(日刊工)」

これらの見出しを追いかけるだけで通産省の動きが読める内容である。特に、80年に開催する国際会議に向けて新聞記事も雰囲気を盛り上げてくれる。

後年、研究開発センタICOTが設立されてから後になっても、このプロジェクトの名前がなぜ第五世代なのかという疑問が出され、議論されることもあった。しかし最終的には日本人が知識情報処理指向(AI指向)のコンピュータを第五世代であると定義したのでそう呼ばれることになったという以外に理由はないのだ。すでに汎用コンピュータの世界には世代という概念がなくなっていこうとしている時期であったから。しかし、1980年代をとおして国際的にもこの呼称が定着していくことになる。ICOTに連なるコミュニティでは、第五世代を略して5Gと表記するようになっていく。


                     


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Last-modified: Tue, 30 Oct 2007 11:24:35 JST (3944d)
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