連載物語/メーカとの摩擦 (1.8)

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わが旅、次世代コンピュータ

第1編 第五世代への旅

第1章 新しい産業政策を

  • メーカとの摩擦 (1.8)

実際のところ、この時期には、電子政策課で、非ノイマンコンピュータの開発を新政策として打ち出したことがメーカにも情報として伝わっている。そして、児西に対してもメーカ側からの反発が露骨に現われはじめている。たとえば、ある酒の席でのことだ。「最近、非ノイマンという、訳の分からないことを主張するひとが出てきている。コンピュータはノイマン方式がいいに決まっている」と声音も高く言い放つ人がいる。児西が、となりに座っている三宅技術班長にあのしゃべっているのは誰なのかを聞くと、コンピュータメーカの集まり、電子協という社団法人の幹部であるという。「児西さん、ガツンと言っておいた方がいいよ」と三宅がいう。電子政策課の政策が批判されたので、三宅も赤い顔をして怒っている。軽いジャブを何発かはお返しする。プロジェクトの発足前から、子供のけんかをしても始まらない。ただし黙っておさめるわけにもいかない。

電子政策課のとなり、電子機器電機課は国産コンピュータメーカを直接所掌する立場にある。電子協は電子機器電機課が監督する社団法人である。このため、非ノイマンを唱える電子政策課の新政策には抵抗があるのも事実である。しばらくの間は、電子協、電子機器電機課とも微妙な関係が続く。総括班長の中野も、今回のプロジェクトには、メーカとは少し距離をおいて進めることを考えていることは児西も知っている。プロジェクト発足の邪魔さえしないでくれるなら、別に何を言われても痛くはない。しかし、実際のところ、電子協と第五世代プロジェクトの関係が修復されるのは、児西の後任である勝山治夫の代になってからだ。児西と電子協のその幹部は機情局の廊下でときどきすれ違うが、お互いに顔をそむけあって、挨拶もしない関係が続く。

中野もこのような雰囲気を知っている。摩擦を一時的に和らげるには大蔵予算ではなく日自振予算のプロジェクトとして静かにスタートするやり方がある。日自振とは、日本自転車振興会の略で、簡単に言えば競輪の上がり、上納金だ。機情局が自転車工業会を監督している。この関係で、上納金を機械工業の振興などの公的な目的に使う場合には、予算の配分に影響を与えることができる。通産省、機情局がもっているもう一つの政策手段でもある。


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Last-modified: Tue, 30 Oct 2007 11:24:35 JST (3944d)
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